私が大学生の頃(1980年代)

 

新年明けまして、おめでとうございます!

 本年はインプラントについて、しばらく書いてみようと思います。

最近、インプラントという言葉をお聞きすることが多くなったと思います。

まだまだ日常臨床ではインプラントよりも入れ歯を選択される方が多いのですが、

 素人?の歯学部3年生になって初めて総入れ歯を見た時、なんでこんなカタマリのような物で食べることが出来るんだろう?と大変不思議でした。

1980年代当時は、インプラントに関しての学生教育は全くありませんでし、現在でも基礎知識だけしか教わってきていないようです。

当時はインプラントの患者さんと言えば、口腔外科で失敗例のインプラントを取り除く処置ぐらいでした。

当時主流だったブレード型や骨膜下型のインプラントを使用していた患者さんが、悪化するとその結果は悲惨なものです。

入れ歯が嫌でインプラントを選んだ方が、その結果は更に入れ歯も入らないような状態に悪化してしまうなんて考えられますか。

そのため大学内では、インプラントをやるような歯科医は信用できない?ごく一部の先生が秘密裏に陰に隠れて研究しているような評価でした。

 私自身が初めて、現在の骨とくっ付き・一体化するオッセオインテグレーション・インプラントを知ったのは大学5年生の1984年頃だったと思います。

今になって思いますと、TV番組からとはなんと不勉強でしょう!

 NHKでの東京歯科大学・小宮山 彌太郎先生が日本で初めて臨床応用されたスウェーデンのインプラント・システムに関する放送でした。

多くの総入れ歯の患者さんが、その恩恵を受け喜びの声が取り上げられていました。

お恥かしながら、こんなすごい治療があるんだなー!と驚かされました。

 また同じ1984年「骨内インプラントの限界と可能性」という本から、この治療方法の開発者ブローネマルク教授の研究内容を初めて目にしてビックリさせらたことを今でも憶えております。

 細胞レベルの基礎研究からなんと既に10年以上の多施設に渡る長期臨床実績が詳細に示されており、このインプラント療法は明らかに今までのインプラントとは違うと確信できました。

また不勉強な私には、こんなにも科学の香りがする歯科治療方法を知りませんでした。

 当時のインプラント治療の適用例は自分の歯につなげてブリッジにするような、奥歯が12本といった少ない歯が無くなったような症例でした。

ところが医師であるブローネマルク教授は当然のように、最も入れ歯で困っている総入れ歯の患者さんに(歯医者の発想では、最も難しいと思われた)適用されました。

 当時,この先生の下で、この治療法について勉強したいと本当に思いましたが、お恥ずかしながら簡単に諦めてしまいました。

 このオッセオインテグレーションとは、インプラント体が骨と直接にピッタリとくっ付いて(光学顕微鏡レベルで)、一体化することにより、噛む力等の機能力を顎の骨に適切に伝達し長期間維持できるようになることです。

この現象をブローネマルク教授は偶然に、骨の中の血の流れを研究中に見つけました。骨の中に植え込んだ、チタン製の観察窓が骨とくっ付いて取れなくなってしまった事が始まりです。

自分以外の異物である金属が体の中で安定して免疫反応により拒否・排除されないなんて事はすごい発見なんです!

 小宮山先生にメカノナイト、チタンは非常に希少な金属であったために、人の免疫系にも異物としての記憶がないのではないか?と伺ったような?

天才の方はこのような偶然を活かす知識と才能があるのでしょう。これを、どうして?入れ歯で困っている患者さんに利用できればと考えたのでしょうか?

莫大な量の当時の犬での動物実験の様子や、組織像などは多くの製書や論文に残されております。

1965年から人に臨床応用が始まり、昨年が40周年の年でありました。