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西葛西 服部歯科医院 (根管治療)

診療時間内では説明が足りなかったことや、お聞きしにくいことを伝えるためにこのブログを作りました。

8 7月

根管治療での器具操作 その7

クラウンダウン法の利点は?

クラウンは歯の頭の部分で、上の方から下へ徐々に進めて削っていく方法です。
根っこの先まで進めるのが目標なんですが、いきなり先を目指さずに入り口の邪魔者から根っこに進めていきます。

クラウンダウン法は、歯の頭から根っこの方へと順々に器具を進めていきます。 
太い器具から細いものへと変えていきます。
前に使った器具よりも細いものを使うと、少しずつ先へと進んでいきます。
クラウンダウン法の利点は、機械的な点と生物学的な面から考えられます。

●感染した神経などの多くを最初に取り除ける 
●上の部分の邪魔者を最初に取り除ける、そうしないと根っこの先にそれを押し込んでしまう 
●根っこの先に早い時から洗浄液を届かせられる
●削りカスを根っこの先へ押し出さない
●手の削っている感覚が伝わり易い
●削る長さをコントロールしやすい

機械的な面

根管治療中に回転したニッケルチタン製ファイルは、ねじれによる疲労と繰り返す曲げによる疲労を受けます。
最も重要な点は、回転中に壁にぶつかっている器具の太さと抵抗性です。
クラウンダウン法では、根元の太い部分のファイルが入り口から削れるので、先端の細い、折れ易い部分は壁に触れていません。
先端がロックして捕まると、折れ易いので徐々にテーパー、角度、開きが小さい物へと変えて、先へ先へと進めていくのです。
食い込まない様に回転させながら上下に動かし、決して先へと押し込んではいけません。
でも後チョット、と押し込みたくなって折れるんですよ。

生物学的な面

どんな器具を使っても細菌をゼロにはできませんので、薬液による洗浄が大切になります。
クラウンダウン法では、上の部分にタップと薬液を入れておく場所ができるので、早くから先の方へ薬を届かせられます。
で、根管内の消毒が進むでしょう。

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7 7月

根管治療での器具操作 その6

ニッケルチタン製のファイルを使う利点は?

ニッケルチタンは今まで使っていたステンレスよりも柔軟なので、太くしても柔らかいんです。
それでテーパー、器具の太くなる程度、開き具合を大きい器具が作れる様になりました。
ステンレスでは2%づつ太くなるんですが、ニッケルチタンでは4〜12%も太くなる器具ができるようになりました。
テーパーが強い方が少ない本数の器具で早く削れます。
また超弾性によって、変な方へ削れたりし難いんです。

欠点?と言えば、削っている時に伝わる感覚が分かりにくい点や横方向へ押し付けて削り難い点でしょうか。
また超弾性のために先を曲げて使えないので、すごく曲がっていたり、細〜くなっている神経を乗り越えるのは難しいです。
が、今ではグニャグニャしたマルテンサイトの器具もできていて、曲げて使えるんですが、コシが弱いので障害物を乗り越えるのは苦手ですね。

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ステンレス製のファイルの利点は?欠点は?

細いファイルで道を見つけるには、よく削れて、しっかりしたステンレス製のファイルが有効です。
小さくなった神経を見つけるにも、ステンレスは優れています。
また価格もずって安いのも助かります。

ただし20番、0.2ミリよりも太くなると硬くなってしまいます。
そうなるとなっ直ぐに削れるので、変な方向へと進む傾向があります。
曲がった神経に太い器具を使う程、間違った方へと削れてしまいガチです。 
5 7月

根管治療での器具操作 その5

根管治療にニッケルチタン製のファイル何がいいの?

ニッケルチタン製ファイルは、ニッケル56%とチタン44%がいろんな結晶の形からできている。
その特徴が根管治療の器具として良いんです。
先ずはその超弾性です。
力を取り除くと元通りの形に戻る性質です。
ステンレスの8倍以上です。

ここでオーステナイ層とマルテンサイト層って名前が出てくるんですが、、、
詳しく知りたい方はネットで見て下さい。
私では、間違って伝えそうなんで。 

ストレス誘導マルテンサイトって言うらしいんですが?
力によって結晶の形がオーステナイ層からマルテンサイト層に変化する事で起こる?ようです。
で、力を取り除くと元のオーステナイ層に戻って、元通りの形になるんです。
変形しても元に戻るので、この性質を形状記憶って言いますね。
動画サイトなどでチタンのメガネをグニャグニャに曲げて、お湯につけたら元通り!なんて出てますよね。
あれです。
ですので、ニッケルチタンはステンレスよりもねじれ疲労、グーっと曲げても壊れないんですね。
なので、適切に使えばニッケルチタンは折れにくいはずなんです。

でも統計によると折れている器具の多くは、現在はニッケルチタンが多いようです。
モーターを使って簡単に早く削れるので、便利ですが、
使用方法を誤れば?誤まらなくとも?折れてしまうリスクは伴います。

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 左のように曲げても、
離すと右のように元通りです。 
4 7月

根管治療での器具操作 その4

レントゲンから、入り口を削るのに役立つ情報は?

●神経の部屋の位置と大きさ(幅と高さ)
●神経がちっちゃくてなっていたり、石があったり
●神経の角のとがり具合
●虫歯
●根っこの神経の本数や曲がり具合
●被せ物の大きさ

一般的に、根っこの神経の数と位置によって穴の開け方が決まります。 
神経の入り口を見つけるのは難しい時には、顕微鏡が必要です。
例えば、神経がちっちゃい時や被せてある歯の神経を見つける時です。
顕微鏡によってよく見えるので、変な所を削っちゃて穴を開けたり、必要もない良い歯を削ってしまう危険が減ります。

この歯では4本の神経を見つけて、測定器のゼロの位置から0.5ミリ短い位置まで削りました。
ステンレス製のファイルで根っこの先までの道作りをした後、楽楽に届く様にした。
その後、ニッケルチタン製のファイルで入り口から根っこ方向へ器具を進めていった。
クラウン、頭から、ダウン、下の方へ進めていきます。
削っている間にはタップリの次亜塩素酸ナトリウムで洗いながら詰めらない様に、細い0.1ミリのファイルで先まで通して確認しながら行った。
キレイに削れたなら、紙のポイントで乾燥後、ガッタパーチャとシーラーで詰めました。

ガッタパーチャっていう樹脂を含んだゴム状のポイントを芯にして、セメントで隙間を埋めて詰めます。

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 上手い!
あなたの歯の詰め物はこんな風に見えますか?
3 7月

根管治療での器具操作 その3


D05CBF55-6CFE-48F9-8465-044AAD9145B8治療

麻酔して、ラバーダムをかけて、一回で根管治療を行った。
電気的根管長測定器で歯の長さを測って、器具を入れたレントゲンで確認した。
右のレントゲンがそれです。

神経の入り口を削る際に考えるべきことは?

入り口の削り方は、治療の成功に大きくかかわってきます。
下手に削ると神経を全部見つけられないし、削り難くなって、器具が折れちゃったりし易くなりますので。
入り口のコツは、
●神経の部屋、頭の部分の天井を取り除く。
●それぞれの神経へ真っ直ぐに削れるように直線化する。
上の部分を楽に削れ、変な方向にずれずに、器具にも無理な力がかかりません。
●次の約束までにフタが緩んだりしません。
●神経の部屋の床、髄床底って言います、を傷つけない。
●これらのために、最も保存的にダメージを少なくする。

教科書にある様な簡単に神経を見つけられるような歯は、歯医者の人生中にほとんどお会いできない。
年令と共に神経は細くなって、虫歯の刺激によっても更に小さくなっていく。

治療された歯では本来の歯の形と異なっているので、特に注意が必要です。
歯のウエスト、頭と根っこの継ぎ目の位置に根っこの神経の入り口があるはずです。



 
1 7月

根管治療 器具操作 その2

診断と治療計画

診断名は右上の6番の不可逆性歯髄炎です。

変な名前ですよね。
不可逆性って、神経を取らずに元に戻れるっていう結果なんです。
治療前から治療結果を診断名に付けるのは、、、
何でしょうかね?
まあ、ザックリ言って神経が取らずに大丈夫そうなのを可逆性、
取らなきゃいけない感じのを、不可逆性の神経の炎症って読んでます。 

この歯の治療方法には
●根管治療
●抜いちゃって、インプラントかブリッジにする
●放っておく、痛みが続いて、腫れるかもしれないけど

この患者さんは自分の歯を残したかったので、根管治療を選びました。
治療を始める前に、被せ物に穴を開けて治療をしてみますが、 
もし虫歯やヒビが見つかったり、神経の入り口が見つからなければ
被せ物を外さなければならなくなり、被せ物は作り直しになりますと、確認しました。

D05CBF55-6CFE-48F9-8465-044AAD9145B8 昔は化膿性、滲出性とか潰瘍性とか、
抜いて組織標本にして顕微鏡で見てみないと分かんないような病名が付いていました。

でも、それって診療室では分かんないですよね。
で、単純名前になったんだと思います。
が、MTAの登場から半分残せるとか?が可能になり、どこまでが可逆性?なのかが、揺れていますね。 
30 6月

根管治療での器具操作 その1

目的

この歯の治療を通して、
根管治療における入り口の削り方、ニッケルチタン製とステンレス製の器具の特徴を学びます。

最初に

52才の男性、右上の第一大臼歯の神経の治療で紹介されて来た。

主訴

右上の6番が冷たいの熱い物にズキズキと痛む。
3週間前に気がついたけど、あまり痛くないし、どの歯か分からなかった。
痛みが強い時には時々、痛み止めを飲んでいた。
右で咬むと痛いので避けていた。

内科的な病歴

特に無し

歯科の病歴

年に一度の検診を受けていた。

診査結果

顔の外には異常は無い。
右上の6番を押したり、根元を押すと痛い。
グラグラしてはいないし、歯周ポケットは2〜3ミリ以下で正常、膿が出たりも無い。
冷たいのを付けると、ズキズキした痛みが数分間続いた後に無くなった。
患者さんの訴える症状と同じだった。
他の歯は正常に反応した。

レントゲンからは、ほっぺた側の2本の根っこが曲がっているのが分かった。

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 左が治療前で、薄く灰色に見えているの被せ物、
どの下に白く見えるクスリがはさんであり、神経に近いですね。

右は根管治療中で、白く映ったバネがラバーダムをとめるクランプ、
神経の中に白い針みたいな器具が差し込んであった、根っこの先まで届いているのか?長さを確認しています。
 
28 6月

被せた後に、神経が悪くなるのは?

冠、被せた後に起こる神経の病気はどの位あるのか?

重要

被せた後起こる神経の症状について、患者さんとよく相談しておくのが大切ですって論文。

最初に

大きな冠、被せ物か3面以上の大きな詰め物をした歯に、起こるかもしれない神経の病気について調べます。 

方法

大きな治療をした2177本の歯の経過を見直してみました。
治療後に神経の治療が必要になったり、抜かなければならなくなった歯を調べました。

結果

8.77%、191人が神経の病気が起こりました。
全体を被せた歯(7.54%)よりも大きな詰め物(9.05%)の方が、少し多かったです。 
詰め物の種類がプラスチックとアマルガム、銀で差は有りませんでした。
また詰め物の面数、3面と4面でも明らかな差は有りませんでした。
被せた歯では抜いちゃう(3.37%)よりも、根管治療(5.78%)が行われる方が多かったです。
被せた歯全体の1.76%、7本だけが抜かなければなりませんでしたが、
大きな詰め物をした歯の5.68%、101本が抜かれてしまいました。

結論

大きな被せ物や詰め物をした後に神経が悪くなるのは、9%以下です。
最もそのリスクが高かったのは、高齢者で4面以上のアマルガムを詰めた歯でした。
しかし全体を被せた歯では、抜かなければならなくなった歯は少なかったです。

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27 6月

根管治療 治療計画 その9

考察の続き

この歯では、治療後の2年間で一度も膿が出るといった症状はありませんでした。 
レントゲンでは奥側の根っこのカゲは消えて、完璧に元に戻った。
手前側の根っこではカゲは小くはなったけど、少し残っていた。
この原因としては、手前の根っこにはどうしてもキレイにかき出せない複雑な部分、ハリ状のイスムスや出っぱりのフィン があるんです。
だから治りが遅れているんでしょう。
この後、4年間の内に無くなるかどうかを見ていく必要があります。
もし追加の治療が必要であれば、外科的な治療となるでしょう。
この根管治療の出来は良好なので、今後に再治療が必要になる事はほぼないでしょう。

新しい被せ物を入れて2年になりましたが、隙間もなくピッタリです。
虫歯の治療をした歯も多くないので、虫歯の再発のリスクは低いでしょう。

歯科衛生による歯ブラシ指導やクリーニングを時々行っていきます。
タバコは歯周病のリスクになるため、禁煙を勧めていきます。
かかりつけ医にてのメインテナンスの大切さを伝えます。
26 6月

根管治療 治療計画 その8

この歯は全ての神経を見つけられ、理想的な位置まで消毒できたので、根管治療の予後、治り具合は大変に期待できます。
治療後、12と24ヶ月後に治り具合を確認しました。
症状もなくて、診査でも問題は見つからなかったし、
瘻孔、膿も出ていず、治療24ヶ月後のレントゲンから根っこのカゲも小さくなっていた。

3FE43A35-D628-4264-92B7-2F77E1C9981A左が12ヶ月後、
右が24ヶ月後です。






考察

治療結果には、根管治療だけでなく歯ぐきの事や被せ物についても考えなければなりません。
神経を取った歯がダメになる時は、これらの問題が関連して起こります。
この歯の治療結果は短期的にも長期的にも良好と思われます。

治療後にはいつも、この治療計画は適切だったのか?この治療は適切に行われたか?と見返すべきです。
最初にその歯の予後、治り具合を考え、様々な治療法と比較しておくべきです。
その後に治療を準備期と最終的なものとを分けて考えることによって、より単純に行えます。




 
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